賞与の給与化とは?企業が知っておくべきメリット・デメリットと注意点

人手不足が深刻化する中、優秀な人材の確保は企業にとって最重要課題となっています。

そのため、多くの企業が「賃上げ」に踏み切っていますが、人件費の増加に伴い、限られた予算の中で人的資本への投資効果を最大化する工夫が求められています。

こうした背景の中で注目されているのが「賞与の給与化」です。

実際に ソニーグループ や バンダイ など大手企業が導入し、話題となりました【マイナビニュース】。

本記事では、賞与の給与化の仕組みや目的、雇用主・従業員それぞれのメリット・デメリット、税金や社会保険への影響についてわかりやすく解説します。


賞与の給与化とは?

「賞与の給与化」とは、従来年に数回支給されていたボーナス(賞与)を毎月の給与に組み込んで支給する仕組みのことをいいます。

たとえば、年間200万円の賞与を支給していた場合、これを月額16万円程度に分割して毎月の給与に上乗せします。

この制度は「従業員の収入安定化」「求人票での月給額を高めて採用競争力を上げる」などの効果が期待されます。


賞与の給与化の目的と導入背景

企業が賞与の給与化を導入する目的には、次のようなものがあります。

  • 人材確保の強化
    求人票で高い月給を提示できるため、採用時に有利になる。
  • 従業員の生活安定と定着率向上
    ボーナス依存から脱却し、毎月安定した収入を提供することで満足度を高める。
  • 人件費の予算管理が容易になる
    業績連動で変動する賞与よりも、固定給として設計することでコストコントロールしやすい。

税金・社会保険への影響

所得税

  • 給与と賞与のいずれも課税対象であり、年間を通じた税額に大きな違いはありません。
  • ただし、賞与は支給時に「賞与特別税率」で一時的に高く源泉徴収されるため、給与化により税負担が平準化されます。

社会保険料

  • 賞与は「標準賞与額」に基づいて別途社会保険料が発生します。
  • 一方で給与化すると「標準報酬月額」に含まれるため、毎月の社会保険料が上昇し、労使双方の負担が増える可能性があります。

雇用主(企業側)のメリット・デメリット

メリット

  • 求人票で「月給額」を高く見せられるため、採用に有利。
  • 従業員の定着率・満足度向上。
  • 人件費の見通しが立てやすくなる。

デメリット

  • 社会保険料の企業負担が毎月増加。
  • 業績悪化時にも柔軟に調整できず、固定人件費が増える。
  • インセンティブ(賞与のご褒美効果)が薄れ、モチベーション低下の懸念。

労働者(従業員側)のメリット・デメリット

メリット

  • 毎月の収入が安定し、生活設計がしやすくなる。
  • 住宅ローンやクレジット審査で「安定収入」として評価されやすい。
  • 育休手当や失業給付など、給与ベースで算出される手当が増える可能性。

デメリット

  • 大きな買い物(車・旅行など)の資金がまとまって得られにくい。
  • 成果に応じた「ご褒美感」がなくなり、働きがいが下がる可能性。
  • 社会保険料負担が増えるため、手取りが想定ほど増えないケースもある。

まとめ

賞与の給与化は、

  • 企業にとっては「採用競争力アップ」や「定着率向上」
  • 従業員にとっては「収入の安定化」

というメリットがある一方で、

  • 社会保険料負担の増加
  • インセンティブ低下

といったデメリットも存在します。

導入にあたっては、単なる「見かけ上の賃上げ」ではなく、経営戦略や従業員の働き方に合った制度設計が不可欠です。

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