一方通行のコミュニケーションが、組織に及ぼす深刻な影響とは?
組織課題×コミュニケーション視点
「最近、部下からの報連相が少ない」と感じている管理職の方は多いかもしれません。
しかしその一方で、現場からはこんな声も聞こえてきます。
「上司の指示が曖昧で分かりづらい」
「“言った・言わない”のトラブルがよく起きる」
部下には正確で迅速な報告・連絡・相談を求める一方で、上司は主語や目的語が欠けた指示を出してしまったり、記憶違いをそのままにしてしまったり…。
こうした状況は、“上意下達だけの文化”が組織内に根づいてしまっていることの表れとも言えます。
そしてこのような文化は、やがてコミュニケーションの断絶や、信頼の喪失といった深刻な課題へとつながっていくのです。
組織に潜む“上司特権”が引き起こす4つの問題
1. 責任の所在が曖昧に
指示が曖昧で、記録が残っていない状態では、問題が起きた際に「誰がどう判断したのか」が分からなくなります。
その結果、責任の押し付け合いが生じ、チームの信頼関係が大きく揺らいでしまいます。
2. 業務の属人化と品質のばらつき
言葉だけの指示や、個人の経験・感覚に頼った進め方では、業務に再現性が生まれません。
属人化が進むほど、成果にばらつきが生まれ、品質の安定や業務改善が難しくなります。
3. 若手人材の成長を妨げる
「とにかく言われたとおりに従えばいい」――
そんな空気が組織に広がると、若手社員は自分の意見を出すことを避け、受け身の姿勢に陥ってしまいます。
その結果、自律的な成長の機会が奪われていきます。
4. 現場の改善提案が届かない
せっかくの現場からの声も、無視されたり、軽視されたりする状況が続けば、やがて誰も意見を出さなくなります。
こうして組織は、貴重な改善の芽を摘み、イノベーションの土壌を失っていくのです。
報連相は「部下の義務」ではなく「組織の文化」
「部下が報連相をしない」のではなく、「上司が、報連相を“されるに値する姿勢”を示せているか」――
今、あらためて問われているのは、そのことかもしれません。
報連相は、上下の関係によって義務付けられるものではなく、誰もが当たり前に情報を共有し合える組織文化として根づかせるべきものです。
上司の指示や判断を可視化し、記録に残す。その習慣が、責任の明確化や業務効率の向上につながります。
コンサルティングの現場から
私たちは、これまでさまざまな業種・規模のクライアント企業において、組織課題の改善に取り組んできました。
その中で強く実感するのは、「組織の生産性や成長性は、コミュニケーションの質に比例する」という事実です。
現場を変える鍵は、管理職の意識にあります。
- 部下に求める前に、自分自身が「報連相の模範となる」姿勢を示せているか。
- それを見直すことが、組織改善への確かな一歩になるのではないでしょうか。
組織改善は、コミュニケーションから始まります。
貴社でも、まずは“対話の質”を見直してみませんか?